院長ブログ

「逃亡者」

[医療・医学など]

子どもの頃「逃亡者」というアメリカの連続テレビドラマがありました。最近では、ハリソン・フォードを主役にしたハリウッド映画のリメイク版が話題を呼びましたから、ご記憶の方も多いと思います。

医師である主人公(確かデビット・ジャンセン演じるリチャード・キンブル)が無実の罪を着せられ、心ならずも逃亡者として、執拗な追っ手から逃げ回る、というストーリーでした。追いつめられながらも、主人公には医師としての義務感や正義感が習い性となっていて、より危険な目に遭いそうになるというのが毎回の山場だったのです。病気の人を救うためには、自分の素性が分かってしまうことも覚悟で医師として全力を尽くすのをハラハラとしてみていたものでした。

医師は患者さんのためによかれとベストを尽くすのが当たり前です。先日前置癒着胎盤の患者さんの手術にあたり、大変残念な結果になり、逮捕、起訴された産婦人科医の判決がでました。患者さんのご冥福をお祈りし、哀悼の意をささげたいと思います。担当医はしかし、患者さんの子宮を温存すべく最善を尽くされたと思われます。本件が有罪になっていたなら、困難かもしれない子宮の温存をはかるより、さっさと子宮を摘出したほうが医師にとっても安全な対応だと考える人もでてきたかもしれません。

リチャード・キンブルの喩えはよくないかもしれませんが、医師の習性として自分の安全より、患者さんにとってベストな治療を模索するからこそ、自分の仕事に誇りをもってあたれるのだと信じます。その意味でも、今回の判決が無罪であったことにホッとしますし、はやく無罪が確定してくれることを切望します。

2008年08月22日 23:45 [医療・医学など]

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