院長ブログ

マクドナルド

[医療・医学など]

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マクドナルドといえば、普通ハンバーガーでしょう。今日は産科婦人科学の世界におけるマクドナルドのお話をしましょう。

唐突かもしれませんが、子宮には頸部と体部があります。体部には月経をおこしたり、胎児を育てたりする大事な役割があることは皆さんもご存知かもしれません。マクドナルドにつながる頸部とてもも大切なのです。妊娠10ヶ月の間、胎児がでてこないようしっかり締まっていて、いざ出産のときは開いて赤ちゃんの通り道になるのです。

この頸部が妊娠途中で短くなったり、開いたりすると、流産や早産になります。それを防ぐ手術として、マクドナルト(M)とシロッカー(S)があります。左の写真のように、マクドナルドは出口をしばります。シロッカーは内子宮口といって頸部と体部の境界を締めます。SとMの違いがわかりますか。Sの方が根本的ですが、膀胱など周囲の組織を剥がしたりするため、大掛かりです。Mは姑息的ともいえますが、それなりに有効です。

手術の説明をしましたが、切迫流産や切迫早産の治療の基本は安静ですので、誤解のないようお願いします。

拙著「授かる」のあとがきにも記しましたが、私自身27年前子どもを28週で早産させてしまいました。なんとか育って欲しいという祈りが通じて成人してくれ、神様に感謝していますが、患者さんのためにはころばぬ先の杖にならなくてはと考える次第です。

2009年01月20日 23:59 [医療・医学など]

卵子提供

[医療・医学など]

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不妊治療にご夫婦以外の第三者から提供された精子・卵子を使ったいわゆる非配偶者間体外受精は、多くの国々では実施されていますが、日本では議論の段階でした。先日、日本生殖医学会はこれを認める方針を示し、兄弟姉妹や友人からの精子・卵子提供も含めた実施条件を策定すると発表しました。

画期的なことですが、非配偶者間の体外受精は、厚生労働省が2003年、「匿名の第三者」に限り認める報告書出しましたが、法制化は進んでおらず、日本産科婦人科学会は慎重な立場を変えていません。従って、一般臨床にすぐにとりいれられるかは、まだ明らかでなく、議論がいるかもしれません。

このことは大きな問題で、以前拙著「授かるー不妊治療とこどもをもつこと」でもとりあげ、日本の現状や卵子がないために妊娠できない21歳の女性のケースレポートも載せました。その折、患者さん自身から「知らない人の卵子よりは、一人の女性、人間として尊敬できる姉の卵子で子どもをうみたい」というお手紙を頂きました。

患者さんのお気持ちにそいたいという思いや、患者さん自身の言葉はいつも心にあり、一日も早く患者さんも社会も納得できる法整備が望まれるところです。症例の詳細は「授かる」305から306ページと371から372ページをご覧ください。

図は讀賣新聞HP「卵子提供」より。

2008年12月15日 23:19 [医療・医学など]

国際シンポジウム

[医療・医学など]

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環境省主催の「平成20年度化学物質の環境リスクに関する国際シンポジウム」が開催されています。本日のシンポジウムでは、「未来に翔く子どもたちのためにー子どもの環境保健ー」が一般公開され、明日は国内外の専門家による公開セッションが予定されています。

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=10344

夕方のレセプションでは様々な分野で活躍し、環境リスクに関心をもつ方々とお目にかかってお話する機会がもてました。

少々気になりますのは、時節柄経費節減のあおりを受けて、毎年おこなわれていた国際シンポジウムが今年で終わってしまうかもしれないということです。内外の研究者が報告し情報を交換するだけでなく、市民にも開かれた会だけに、存続を祈念するものです。

2008年12月14日 23:22 [医療・医学など]

環境ホルモン学会

[医療・医学など]

環境ホルモン学会は通称で、正式には日本内分泌撹乱化学物質学会と言い、環境ホルモンとその影響についての学問・技術の進歩発展及び環境の改善に寄与することを目的として、1998年に設立されました。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsedr/

第11回の環境ホルモン学会研究発表会が本日および明日開催されます。

それと平行して、環境省が、12月14日(日)・15日(月)の両日、東京ビッグサイトにおいて「平成20年度化学物質の環境リスクに関する国際シンポジウム」を開催します。初日のシンポジウムでは、「未来に翔(はばた)く子どもたちのためにー子どもの環境保健ー」と題して、子どもの環境保健をテーマとした公開シンポジウムを行い、2日目の国内外の専門家による公開セッションでは、化学物質の内分泌かく乱作用に関する取組の今後の展望や、化学物質等の環境因子とアレルギーに関する研究をテーマとして議論を予定しています。

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=10344

日本は環境ホルモン学会や環境省などの努力もあって、環境ホルモン問題への取り組みは進んでいて、世界をリードしてきたと思います。ところが研究成果とは裏腹に社会の注目度などは低下して、それと同時に研究環境なども不十分になってきていると危惧されます。

関心のある方はぜひ参加して頂きたいのですが、、、

2008年12月13日 23:30 [医療・医学など]

12月12日讀賣夕刊

[医療・医学など]

本日の讀賣夕刊15ページに興味深いというか、自分の医師としての行き方を考えさせる記事があったので、紹介、引用させてもらいます。

「メスはさびても」13というコラムあるいはコーナーでしたので、外科系医師出身の方が連続して担当されているのだろうと思いました。見出しは「医師の説明が悲観的なワケ」で、内容のおおよその見当は読む前からつきました。昨今の医療は防衛的あるいは萎縮的と表現されるように、医師の患者さんへの説明には最悪の結果も想定した悲観的な面が強調されることがありえます。筆者久坂部羊氏もコラムの中で、「さほど危険な手術でなかったが、説明した医師が厳しく、絶望的な話をするのがなぜかわからなかった」という主旨のことを書いておられました。結論としては、楽観的でも悲観的でもない「ほんとうのところ」を説明できればいいのだが、その幅が広いので、困るわけだと結んでおられます。全文を引用するわけにもいきませんが、研修医時代の体験を、人を引き込む筆致で語っていますので、ご興味ある方は讀賣紙面をご覧ください。

毎日患者さんに病状や手術について説明するわが身にかえって考えてみると、自分の性格や人生観、過去の体験にもよるのか、楽観的な見方からお話を初め、患者さんの理解と信頼を得られてから悲観的なことも最小限はお話しているように思います。患者さんの立場に立つと、同じ事を説明されても、受け止め方は大きく違います。まして実際の治療法の選択となると、「ほんとうのところ」の大切さは切実です。拙著『授かる』にも書きましたが、妊娠を希望しながら、子宮全摘を勧められるかたも決して少なくはありません。

http://www.dr-tsutsumi.jp/gyne_sick/myoma_report.php

実は今日もそのような相談を受けました。

患者さんのリスクは医師のリスクでもあります。それをともに背負って、先の『授かる』の患者さんのように無事お子さんをもつ方をお世話できるのは、産婦人科医として最も幸いなことです。自分があの時勇気をだして頑張らなければ、生まれていなかったかもしれないという子どもの成長をかげながら見守らせてもらえるのは、生殖医療に携わるものの醍醐味です。記事を拝見して自分もまだまだ前向きに頑張るぞと思った次第です。

今産婦人科医になる人が少ないことが社会問題にもなっていますが、こんなに素晴らしいやりがいのある産婦人科へ大勢の方が志してくださることを期待します。

2008年12月12日 23:41 [医療・医学など]

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