女性の病気 | 子宮の病気について
子宮内膜症について
子宮内膜症は子宮にできる病気ではありません。子宮内膜が子宮以外の場所に発育する不思議な病気です。卵巣にできてチョコレート嚢腫と呼ばれる腫瘍を作ることがよくあります。 子宮内膜症がどうして発生するのかは今でも解明できているわけではありません。要因として、昔からあげられているものに、月経時に子宮内膜が月経血と一緒に卵管を通って逆流するという「子宮内膜移植説(逆流説)」があります。逆流した月経血の刺激で腹膜が子宮内膜に化ける「化生説」も有力です。いずれにしても子宮(子宮内膜)の存在とエストロゲンの活発な分泌が、骨盤内に子宮内膜症ができるために必要です。ただし脳や肺にできる子宮内膜症や男性にごく稀に生じるものはこれだけでは説明しきれません。そこで発生の初期に子宮内膜の「芽」がさまようという「迷入説」などもあります。最近では環境ホルモン特にダイオキシンの関与がいわれています。 子宮内膜症の治療法には薬物療法と外科的療法があることは先に示しました。外科的療法は病巣のみを除去する保存療法と子宮あるいは卵巣または両者を切除する根治療法があり、両者ともに腹腔鏡下手術で実施できるようになりました。保存手術の場合、腹腔鏡の利点を生かし、子宮の後ろのダグラス窩や前の膀胱子宮窩の微小な病変まで拡大した画面上で探し出し、病巣を除去します。病変が腹膜上に点在していれば(その外見からブルーベリィースポットと呼ばれる)、レーザーや電気メスで焼灼します。癒着を作っている部分は丁寧に剥離します。子宮内膜症の癒着剥離は難度が高く、術者の技術、熟練度を必要とします。東大では手術の難度をIからIIIまでの3段階に分類していますが、嚢腫を核出して卵巣そのものを温存する場合も、根治術として子宮全摘術をおこなう場合も、子宮内膜症の手術はレベルIIIで最高難度の手術です。