女性の病気 | 子宮頚部がんと子宮体部がんについて

子宮頸部がんと子宮体部がん

子宮がんは子宮の出口付近にできる子宮頸部がんと本体部分にできる子宮体がんに分類されます。前者は組織型(細胞の性質)でいうと扁平上皮がんが圧倒的 に多く、最近ヒトパピローマウイルスの感染との関係が注目されています。性交によりパピローマウイルスに感染(性感染症)し後年子宮頸部がんを発症すると 考えられています。初交年令の低下により子宮頸がんの発症年令も低下し、未婚者や妊娠して発見される子宮頸がんの取り扱いが問題になっています。後者は子 宮内膜由来の腺がんが多く、閉経前後の女性に好発します。エストロゲン依存性疾患であり、リスク因子として高血圧、肥満、耐糖能異常、高脂血症等があげら れます。生活習慣病の一種とも考えることができます。
近年子宮体がんの比率が増加していることも注目されています。私が学生の頃は子宮がんの中で体がんの 占める割合は5%程度でしたが、最近は30%以上といわれ、特に都市部ではより顕著です。

子宮頚がんの発生過程をみると、頚部の上皮が異型上皮(前がん状態)の時期を経て、粘膜のみががんに置き換わった上皮内がんという状態になります。これ を0期のがんと呼びます。診断には細胞診、組織診、コルポスコピーが用いられます。この時期であれば、子宮膣部の円錐切除で子宮温存が可能です(表1)。 がんが進行すると粘膜の下の基底膜を越えて広がり始めます。この時期をIa期の微少浸潤がんと言います。治療には子宮全摘が勧められますが、若年者では円 錐切除で子宮温存し、厳重に経過をみることもあります。さらにがんが大きく発育して浸潤がんであるが、頚部に限局している場合がIb期です。この時期には リンパ節への転移の可能性も高まり、温存限界を超えるという考えが一般的で、広汎子宮全摘術と骨盤リンパ節の切除が標準的におこなわれます。II期になる とがんの広がりが頚部を超えて浸潤します。この時期では手術療法と放射線療法を組み合わせることが多くなります。III期あるいはIV期まで浸潤が広がる と手術療法は困難になり、放射線療法と化学療法が組み合わせた治療が主体になります。

子宮体がんは子宮内膜の腺細胞から発生する腺がんです。子宮内膜増殖症と呼ばれる時期を経過することが多いと考えられています。子宮体がんもI期から IV期に分類され、ステージにより、治療法もことなります。I期はがんが子宮体部に限局するもので子宮全摘術がおこなわれ、がんがある程度大きく子宮筋層 に浸潤している場合は、骨盤リンパ節切除もおこなわれます。II期はがんが広がり、子宮頚部をも浸潤するもので、この場合は広汎子宮全摘術、骨盤リンパ節 切除が標準的に実施されます。III期はがんが子宮を超えて広がるが骨盤を超えないもの、IV期は膀胱、直腸粘膜への浸潤するか骨盤を超えて広がるもので す。III期あるいはIV期でも手術療法を実施することはありますが、放射線療法と化学療法を組み合わせた治療が主体になります。エストロゲン依存性疾患 であり、ホルモン療法(プロゲスチン療法)もおこなわれることがあります。

 表1.子宮頚癌の進行期分類

進行期 状態 治療法
0期 上皮内癌(上皮のみに癌細胞) 円錐切除で子宮温存可
Ia期 微少浸潤癌 子宮全摘が一般
Ib期 微少浸潤癌 広汎子宮全摘術+(放射線療法)
IIa期 頚部を超えて膣壁にひろがる
ただし3分の2を超えない
広汎子宮全摘術+放射線療法
IIb期 子宮傍組織浸潤があるが
骨盤壁に達しない
広汎子宮全摘術+放射線療法等
IIIa期 膣壁浸潤が3分の2を超える 放射線療法等
IIIb期 子宮傍組織浸潤が骨盤壁に達する 放射線療法等
IVa期 膀胱、直腸粘膜への浸潤 放射線療法等
IVb期 骨盤を超えて広がるもの 放射線療法等

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