腹腔鏡下手術 | 腹腔鏡下手術論

子宮内膜症の腹腔鏡下手術

腹腔鏡は不妊症の原因検索において、不可欠な検査でその際に子宮内膜症が発見されることは多く、また子宮内膜症の診断確定や進行期評価のために腹腔鏡が実施される。従来の子宮内膜症の治療指針としては、1.腹腔鏡検査による診断、ステージの確定についで、2.GnRHないしダナゾールによる薬物療法がおこなわれ、3.要すれば開腹手術が実施されるのが一般的であった。腹腔鏡下手術の応用により子宮内膜症の各種病変に対しても診断と同時に手術治療がおこなわれるようになった。これは開腹を回避し患者に対する侵襲が少ないのみならず、術後の癒着形成も最小限であると期待され、不妊治療においては特に有用であると考えられる。子宮内膜症治療法のパラダイムが変化しつつあるともいえる(図5)。
腹腔鏡で子宮内膜症を発見、診断した場合、病巣を可及的かつ一期的に病巣を除去する。ブルーベリースポット等の腹膜病変に対してはレーザー(注)ないし電気メスで燒灼する。この場合腹腔鏡下手術の利点を生かし、微小な病変までくまなく探し出し適切な処置をおこなうことができる。癒着剥離は卵巣や卵管周囲の癒着病変の処置が中心となる。付属器と広間膜間あるいはダグラス窩を開放するため子宮と直腸間等の剥離もおこなう。不妊症例では予め通色素検査をおこない卵管の疎通性を確認する。卵管機能に問題があるときには卵管周囲癒着の剥離は適応とならない。また月経困難症の強い症例には仙骨子宮靭帯の切断を加えることもある(注LUNA)。子宮内膜症のチョコレート嚢腫に対しては内溶液の吸引洗浄、嚢腫のアルコール固定法等が腹腔鏡下に実施されることもある。しかしアルコール固定の場合、嚢腫の組織型を確認できない、卵巣に対する毒性、再発の可能性等の問題点がありチョコレート嚢腫に対しても他の卵巣嚢腫同様核出手術が原則となる。

「注」LUNA
LUNAとはlaparoscopic uterosacral nerve ablationの略で仙骨子宮靭帯内を走る骨盤痛に関する知覚神経を切断する処置である。靭帯の子宮付着部付近をレーザーないし電気メスで処置する。子宮内膜症例のみならず機能性月経困難症例にも実施される。

図5.子宮内膜症患者取り扱いの変化

子宮内膜症の診断と同時に腹腔鏡下手術で病巣の除去につとめる。不妊例では直ちに妊娠をめざし原則として術後の薬物療法は実施しない。自然妊娠不可と判断した場合は早期ARTに移行する。

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