腹腔鏡下手術 | 腹腔鏡下手術論

卵巣疾患の腹腔鏡下手術

卵巣嚢腫

卵巣嚢腫は婦人科疾患の中で最も頻度の高いものの一つであるが、その手術術式である嚢腫核出術、卵巣(付属器)切除術ともに腹腔鏡下で実施される。腹腔鏡下核出術の適応は良性卵巣嚢腫で悪性卵巣腫瘍の疑われる場合は禁忌とする。超音波、CT、MRI等の画像診断で良性か悪性の鑑別をおこなう。これら画像診断で漿液性、ムチン性、奇形腫、チョコレート嚢腫等組織型まで高精度に診断できる。CA125、CA199等の腫瘍マーカーも参照する。また一定期間の経過観察をおこない黄体嚢腫等生理的なものの除外も必須である。
嚢腫核出術、付属器切除術の選択にあたっては、年令・挙児希望の有無などを考慮する。前者は機能保存手術であり、閉経期以降の患者には適応とならず後者が薦められる。逆に生殖年令にある女性あるいは小児の卵巣嚢腫では妊孕性を保存する嚢腫核出術を原則として、安易に切除手術をおこなってはならない。
腹腔鏡下卵巣嚢腫核出術を概略すると、切開する部分に予め電気凝固をおこない鋏鉗子で卵巣表面を切開嚢腫を露出させる(step 1)。続いて卵巣実質部分より剥離鉗子と鋏鉗子を用い嚢腫を剥離する(step 2)。核出した嚢腫は組織回収用バック中に収め、内容液を吸引する。この操作により嚢腫内容の腹腔内流出を防ぐことができる。嚢腫を剥離した卵巣実質面を観察出血点があればバイポーラー型の電気メスで凝固止血をおこなう(step 3)。創面は吸収糸にて縫合、卵巣の形成をおこなう(step 4)。卵巣を嚢腫とともに腹腔外へ誘導し核出操作を実施する方法もある。これは癒着のない上皮性嚢胞の核出などに適応されるが、チョコレート嚢腫等には適さない。

多嚢胞性卵巣症候群

多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCO)の排卵障害に対する治療として排卵誘発剤を中心としたホルモン療法が第1選択となるが、卵巣に対する外科治療も実施されてきた。外科治療としては、開腹下の卵巣楔状切除がよくおこなわれたが、最近では腹腔鏡下手術による卵巣表面の焼灼が主流になりつつある。
手術方法は卵巣表面の電気メスまたはレーザーによる焼灼である。一卵巣あたり50ないし60ヵ所を処置し卵巣はゴルフボール状を呈する。卵巣楔状切除は、腹腔鏡下手術としても実施可能であるが、卵巣の容量の減少、術後癒着等の問題があり、あまり実施されない。
両側の卵巣表面燒灼により患者のLHとアンドロゲンレベルは急速に低下し、自然排卵が期待される。

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