腹腔鏡下手術 | 腹腔鏡下手術論

婦人科領域における腹腔鏡下手術

各外科領域で患者に対する侵襲を少なくするminimally invasive surgeryが試みられている。その代表が内視鏡下手術ということができる。わが国においても近年婦人科領域における内視鏡下手術の応用は目覚ましいものがあり、表1に示すように各種疾患の手術治療に内視鏡下手術が導入されている。

表1.産婦人科領域における内視鏡下手術

疾患 手術術式
子宮筋腫 腹腔鏡下子宮全摘術、腹腔鏡下筋腫核出術、子宮鏡下筋腫核出術
卵巣嚢腫 腹腔鏡下付属器切除術、腹腔鏡下嚢腫核出術
子宮外妊娠 腹腔鏡下卵管切除術、腹腔鏡下卵管部分切除術、腹腔鏡下卵管線状切開術
子宮内膜症 腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術(腹膜病変焼灼・癒着病変剥離・嚢腫摘出)
子宮中隔 子宮鏡下子宮中隔切除術
卵管閉塞 卵管鏡下閉塞解除術、腹腔鏡下卵管吻合術
多嚢胞性卵巣 腹腔鏡下卵巣表面焼灼術、腹腔鏡下卵巣楔状切除術
月経困難症 laparoscopic uterosacral nerve ablation (LUNA)
過多月経 hysteroscopic endometrial ablation
婦人科領域では腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術のみならず、卵管鏡下手術(卵管閉塞:閉塞解除術)胎児鏡下手術(twin-to-twin transfusion syndrome吻合血管処理)などの内視鏡下手術が広く実施される。

その中心は腹腔鏡下手術手術で、子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮外妊娠、子宮内膜症などほとんどの良性疾患に適用される。施設にもよるが、大多数の手術を腹腔鏡に実施されるようになった(図1)。また子宮鏡下手術も子宮筋腫や子宮奇形などの手術に適用され、開腹を回避できる場合が増え、開腹手術の割合は減少しているのが実情である(図1)。

図1.婦人科疾患のアプローチ

1997年の婦人科良性疾患の手術術式。内視鏡手術が96%を占める。ただし2症例(約1%)においては開腹術に移行した。(「生殖医療のすべて」より引用)。術前のインフォームドコンセントの事項としても重要である。

卵管鏡下手術や胎児鏡下手術は未だ広範に実施されるにはいたっていないが、新たな術式や適用が検討されている領域である(表1)。内視鏡下手術は主として開腹を回避できることが患者に対する侵襲を軽減する最大の理由である。患者の術後の疼痛は極めてすくなく、入院期間は短縮され、術後社会復帰までの日数も半減以下になるといえる。これは個人の負担を軽減するばかりか、医療費の節減、社会の負担の節減にもつながる。また婦人科特有の問題として、術後癒着による2次的な不妊症発生がある。内視鏡下手術は開腹操作がないため、術後の癒着が少ない点も妊孕性保存の面から大きなメリットとなる。

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