腹腔鏡下手術 | 腹腔鏡下手術論

腹腔鏡下手術の利点・欠点

腹腔鏡下手術では通常気腹下にスコープで得られる画像のもとで専用の手術器具を用いて手術を実施する。開腹は回避され手術創は微小である。これは大きな利点であるが、それに伴う欠点も生じうることも理解しなくてはならない(表3)。
利点の第1は創が5-10mmと微小であることが指摘される。それにともない術後疼痛が微小で大多数が鎮痛剤不要であり、入院期間も術後3-7日で退院と短縮される。従って早期社会復帰可能である。また術後癒着が微小なことが妊孕性の保持に有用であることは言うまでもない。また腹腔鏡下手術の特徴として骨盤内の死角の解消や拡大した術野で手術可能であること、電気メスを含む特殊器具の使用が可能であることが挙げられる。これらにより単に開腹を避ける手術のみならず、より優れた手術として発展する可能性もある。
欠点として腹腔鏡下手術の特殊機器・器具を必要とし、その結果手術コストは上昇する。全身麻酔や骨盤高位の体位を必要とし、気腹もおこなう関係で、老人や呼吸機能に問題がある場合は適さないこともある。腹腔鏡下手術に特異的な合併症として代表的なものは気腹中の合併症が挙げられる。Paco2の上昇はよく見られ、それに関連する血圧の上昇・低下、不整脈に注意を要する。閉鎖空間での電気メス使用による他臓器への障害にも注意する必要がある。筋腫核等の摘出物の回収が困難な場合や、切開・縫合等の手術操作に多少の制限があるため、手術時間が延長する傾向がある。

表3.腹腔鏡下手術の利点・欠点

利点 欠点
創が微小(5-10mm) 特殊機器・器具を必要とする
術後疼痛が微小(多数が鎮痛剤不要) 全身麻酔を必要とする
入院期間短縮(術後3-7日で退院) 骨盤高位の体位を必要とする
早期社会復帰可能 気腹を必要とする
術後癒着が微小 腹腔鏡下手術に特異的な合併症がありうる
骨盤内の死角の解消 摘出物の回収が困難な場合がある
拡大した術野で手術可能 手術操作に多少の制限がある
電気メスを含む特殊器具の使用が可能 手術時間が延長する傾向がある
「注」インフォームドコンセント
腹腔鏡下手術には利点も多いが、欠点として挙がられるものもある。術中に開腹術に移行せざるを得ない場合もある。患者に対しては腹腔鏡下手術の内容や利点のみを強調した説明に留まらず、合併症を含めた欠点やデメリットについても理解を得ておく必要がある。また腹腔鏡下手術には限界があり、患者の侵襲を最小限にとどめるために開腹手術への移行もありうることの理解と同意は必須である。

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