腹腔鏡下手術 | 腹腔鏡下手術論

子宮外妊娠の腹腔鏡下手術

子宮外妊娠は従来婦人科救急疾患の代表的なものであった。近年鋭敏な妊娠診断薬(hCG測定法)や経腟超音波法の進歩により子宮外妊娠は早期に発見され、無症状の状態で診断されることも多く、機能温存も図られるようになった。手術方法として、開腹手術と腹腔鏡下手術がある。卵管妊娠破裂等により大量の腹腔内出血でショック症状を呈するものを除き、大多数に腹腔鏡下手術の適用が可能である。
腹腔鏡下子宮外妊娠保存手術としては卵管妊娠に対するlinear salpingostomy卵管線状切開がある。これは卵管妊娠部位の反間膜側に1ないし2cm程度の縦切開を加え、妊娠内容物を除去するものである。もう一方は卵管を切除する卵管摘出術である。卵管間膜を電気凝固後または結紮後切断する。
保存手術の選択には、患者の将来における挙児希望の有無が重要であるが、一般に1)生存胎児の存在、2)hCG高値、3)胎嚢径が大の場合は予後が不良で不可とされる。腹腔鏡下手術特に保存手術の場合、persistent ectopic pregnancy(注)が5ないし10%に報告されている。また術後に子宮外妊娠を繰り返す場合もあり保存手術には限界もある。またメソトレキセート(MTX)の外妊局所への注射もおこなわれることがある。

「注」persistent ectopic pregnancy
persistent ectopic pregnancy(PEP)とは外妊手術後hCGが高値を持続し存続子宮外妊娠となることをさす。開腹下の保存手術後にも発生したが、腹腔鏡下手術後に高率であることが報告されている。成因は術中の絨毛遺残であるが、腹腔鏡下手術に多い理由としては、早期に発見され処理されるため幼若絨毛の生着能が高いことなどが考えられている。手術に際してはPEPについてもインフォームドコンセントを得ておく必要がある。術後にはhCG値のフォローアップを厳重におこない、PEPと診断された時はMTX療法ないし手術を考慮する。

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