腹腔鏡下手術 | 腹腔鏡下手術論

腹腔鏡下手術の原理と機器器材

腹腔鏡とビデオ装置

婦人科内視鏡手術に用いる主な機器等を表2に示した。通常用いられる硬性鏡は中央部分に観察した像が伝わる管腔があり、その周囲同心円状に光源からの照射光を伝える光ファイバーが配置されている。これをトラカールより挿入使用する。また内視鏡先端に超小型カメラを取付けた電子内視鏡もある。

表2.腹腔鏡下手術に必要な機器・器具等

機器等 コメント
トラカール 鉗子類挿入のための管状のルート. 通常10ないし5mm径のものを用いる
腹腔鏡(硬性鏡) 光ファイバー付き. カメラおよび光源が接続
気腹装置 自動気腹圧調節機構により一定圧のガス(CO2)を供給する
光源 ハロゲンランプ. 自動光量調節装置により明るさを一定化に保つ
カメラ 3CCDカメラが主流になり鮮明な画像がえられる
ビデオ装置 モニター画面をレコーダーで保存することができる
電気メス モノポーラー型(対極板を必要とする)、バイポーラー型(止血にすぐれる)
レーザー KTP(切開・止血共に優れる)、YAG、CO2、アルゴン)
鉗子類経 操作鉗子(鋏・把持用・剥離用など)、自動縫合器、持針器、組織回収用バッグ

腹腔鏡下手術では硬性鏡に接続したビデオカメラで腹腔内をモニター画面に映し出し、それを観察しつつ手術をおこなう(図2)。従って、その画像のよしあし鮮明度が腹腔鏡手術の精度を左右すると言うことができる。カメラでは硬性鏡からの光信号を電気信号に変換するが、charge coupled device (CCD)という半導体製品が用いられている。特に3つのCCDで3原色にわけて処理する3CCD方式では鮮明な像が得られる。ビデオモニターは通常術者用、助手用の2台を使用する(図2)。

図2.腹腔鏡下手術のセットアップ

「注」腹腔鏡の挿入方法
スコープを腹腔内に挿入する方法を大別するとオープン法とクローズド法の2つになる。オープン法では臍下の腹壁を小切開して、直視下に筋膜と腹膜を切開し、スコープ用トラカールを腹腔内に挿入する方法である。腹腔内を確認して行うために、ブラインドの操作を伴うクローズド法に比べて安全性が高い。クローズド法は気腹針を直接腹腔内に刺入し気腹を開始した上でスコープ用トラカールを挿入する。またはトラカールを直接腹腔内に挿入する方法もある。これらは簡便であるが、癒着例等では臓器損傷のリスクが高い。オープン法とクローズド法の実施される頻度は施設によってことなるが、初心の術者にはオープンラパロが薦められる。

気腹装置

腹腔鏡下手術においては手術の視野を得るために腹腔鏡内をガスで充満させる。気腹装置は一定圧(通常8-10mmHg)の腹腔内圧を保つべくガス(CO2)を供給する機器である。術前に内圧、流量を設定すれば腹腔内圧を感知しガスの出力は自動的に調節される。

「注」腹壁吊り上げ法
腹壁吊り上げ法は気腹法に代わり腹腔鏡下手術で視野を得る方法である。大きく分けて「全層吊り上げ法」と「皮下吊り上げ法」がある。前者は腹腔内に挿入したアームやバルーンで腹壁全体を吊り上げ、後者は皮下に通した鋼線により腹壁を吊り上げる方法である。腹壁吊り上げ法の利点としては、気腹ガスが不要で気腹による悪影響を受けないことである。気腹に比べ視野の確保で劣ることがあるが、経済性にも優れ婦人科腹腔鏡下手術にも用いられる。

光源

腹腔鏡下手術においては手術の視野を得るために腹腔鏡内をガスで充満させる。気腹装置は一定圧(通常8-10mmHg)の腹腔内圧を保つべくガス(CO2)を供給する機器である。術前に内圧、流量を設定すれば腹腔内圧を感知しガスの出力は自動的に調節される。

電気メスおよびレーザー

電気メスとレーザーはともに内視鏡下手術では切開、凝固の両方の用途に用いられ力を発揮する。電気メスの場合、生体内を電流が流れる時に発生する熱作用により、切開凝固をおこなうもので、電極の形式によりモノポーラーとバイポーラー式に分けられる。前者は対極板を要し、メス先から電流は対極板に流れ込む。後者は対極板に相当する電極をメス先端に付けたものでピンセット型となっており凝固性に優れる。

「注」手術用レーザー
レーザーとはlight amplification by stimulated emission of radiation (LASER)の頭文字をとったもので単一周波数の単色光であるという特徴がある。CO2、YAG、アルゴン等種類があるが、腹腔鏡下手術でよく用いられるのはKTPである。これはpotasium titanyl phosphateにより波長532nmの緑色の光を発するものである。水を透過し、ヘモグロビンに吸収され、止血効果が高い特徴を有する。グラスファイバーから照射され一定角度で広がるため、組織との距離即ち接触(contact)、近距離(near-contact)、非接触(non-contact)によりそれぞれ切開、蒸散、凝固の異なった機能を発揮できる。

鉗子等

操作鉗子は用途別に分けると、把持鉗子、剥離鉗子、鋏鉗子、生検鉗子、電気凝固鉗子等がある。その多くは電気メスとして利用できる。また持針器、針も腹腔鏡下用が造られ使用されている。
腹腔鏡下手術用の特殊器具として自動縫合器がある。左右3列のステープルにより組織を挾鉗し、内蔵メスによりその中央を切断するものである。チタン製のクリップやあらかじめ結紮されたリング状の糸も止血や結紮に用いられる。また腹腔内より嚢腫等の組織を回収するために考案された袋も有用である。

このページのTopへ戻る