女性の病気 | 子宮の病気について

子宮筋腫ケースレポート/60以上の筋腫切除―3度の手術後に授かる

「おめでとうございます。ご妊娠です。よくがんばりましたね」
「ありがとうございます」
「妊娠はされましたが、まだまだ流産やいろいろなことが起こるかもしれません。でも大きな前進です。ほんとうに良かったですね」

Aさんは37歳、社会に出て、仕事に恵まれキャリアを伸ばし、なかなか子どもをつくるひまもないくらい忙しい生活をおくっておられました。ここ数年月経量が多いことに気づき、貧血の度合いもひどく、子宮筋腫による過多月経および鉄欠乏性貧血と診断されました。粘膜下筋腫もあり、子宮筋腫が不妊因子でもあることがわかりました。
そこで大きな筋腫10数個の核出術を受けました。小さな筋腫は残っているのはわかっていましたが、あまり小さなものまで手をつけるのは得策でないと判断したうえでの手術でした。
しかし、しばらくすると再発し、手術を余儀なくされ、さらに再々発により、3度目の手術を受けました。3度目の手術ではかなり小さなものまで摘出し、最初から数えると合計60個以上の筋腫をとったうえでのようやくの妊娠でした。
妊娠初期の経過はおおむね順調でしたが、中期になったところで、急激な腹痛を訴えて来院され、入院しました。調べてみると腸閉塞を起こしていました。筋腫の手術をしたあとの腸管の癒着が原因による通過障害と判断して、絶食と点滴で胎児が育つのを待ちました。
症状がおさまらなければ、腸の手術と帝王切開を緊急でしなくてはならない。でも赤ちゃんはまだ1000gくらいです。極小未熟児でうまれたら大変とヒヤヒヤしましたが、Aさんは妊娠10ヶ月までがんばり抜き、帝王切開で無事出産することができたのです。
お母さんと赤ちゃんが無事に退院するまで見届けて、はじめて不妊治療は成功したといえると思ったしだいです。


『授かる』(朝日出版社)平成16年10月30日刊行より引用

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