女性の病気 | 子宮の病気について

子宮内膜症ケースレポート/激痛―チョコレート嚢腫の破裂

「子宮内膜症ということですが、ご病気の経過を話してくれますか」
「あの日、急におなかが痛くなり、立っていられなくなり、這うように近くの病院にいきました。盲腸だということで救急手術を受けることになりました」
おなかを開けたら、ドロドロのチョコレート状のものが溜まっていたといわれませんでしたか」
「そうですが、どうしてわかるのですか」
「チョコレート嚢腫の破裂は盲腸(虫垂炎)と症状などが類似して、よくまちがわれるのです」
Dさんは当時28歳、少し生理痛が強くなったかなと思ってはいました。しかし仕事が忙しく、産婦人科で検診を受けることは考えてもいませんでした。そのあいだに子宮内膜症ができて、チョコレート嚢腫がだんだん大きくなっていたのです。その日、嚢腫の表面の一部に破綻が起こり、ドロドロした中身がおなかの中に漏れだしたから大変です。腹膜が刺激されて、痛みとともに発熱や白血球の増加も起こります。虫垂炎と同じような症状が起こりますので、あらかじめ子宮内膜症とわかっていなければ、虫垂炎と診断されることが少なからずあります。
このときは子宮内膜症の診断はつかず、おなかを閉じられたので、子宮内膜症の病変はあちこちにひろがってしまいました。その後Dさんは子宮内膜症の激痛に苦しむことになります。月経のときだけでなく、排卵の前後にも痛みが起こり、苦しい痛みとの戦いが始まりました。そして巡り巡って私のところに紹介されてこられたのです。
さまざまな薬物療法や手術治療を経験されたDさんは、本書『授かる』の出版をご相談したところ、日頃から自分のからだにこころを配ること、敷居は高くとも、勇気を出して診療を受けることの大切さをメッセージとして送ってくれました。


『授かる』(朝日出版社)平成16年10月30日刊行より引用

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