ホスピタウン
子宮内膜症 腹腔鏡下手術で確実に摘出できる
子宮以外の場所に子宮内膜が
子宮内膜症は、子宮内膜が骨盤や卵巣などの子宮以外の場所にできる病気で、卵巣から出る卵胞ホルモンのエストロゲンによって増殖します。
子宮内膜は月経とともに剥がれ落ちて出血し、体外に排出されます。子宮以外の場所にできた内膜も、月経時やエストロゲンの高くなる排卵期に活動が活発になり、さまざまな症状を引き起こします。主な症状としては、月経過多、激しい月経痛、頭痛、月経時以外の下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛などが挙げられます。これらの痛みは「おなかの底が絞られ、引きちぎられるような痛み」と表現され、厚生労働省の調査では、鎮痛剤を服用しても日常生活に支障をきたす人が、全患者数の18%にも上ります。
子宮内膜症の原因は、まだはっきりと解明されていませんが、月経を経験する回数に依存するため、月経が規則正しく周期が短い人ほど子宮内膜症が発生しやすいといえます。近年は初経の年齢が早まり、出産が高齢化しているため、子宮内膜症は急激に増加し、100〜200万人の患者がいると思われます。
子宮内膜症の診断は(1)問診、(2)内診、(3)超音波・CT・MRIによる画像診断、(4)腫瘍マーカー、(5)開腹・腹腔鏡による確定診断によって行なわれます。腫瘍マーカーは、がんの診断に使われるものですが、中でもCA125は、子宮内膜症でも高値を示します。
治療方法には薬物療法と手術療法があります。患者の年齢や妊娠の希望があるかなどによって、選択する治療法は違ってきます。
薬物療法
薬物療法のうち、一つは鎮痛剤や排卵を抑えるピルの投与といった対症療法で、もう一つはホルモン剤を継続的に投与し、一定期間排卵をなくして、閉経と同じ状態にする治療法です。この療法では、月経のない間は病巣が縮小し、痛みも治まります。しかし薬を止めると月経が再開し、痛みが戻ってきてしまいます。また治療中にはイライラ、ほてり、骨量の減少など、更年期障害と同様の副作用が出る場合もあります。手術療法
手術療法には病巣のみを除去する保存療法と、子宮・卵巣、またはその両方を切除する根治療法があります。保存療法では病巣だけを切除し、子宮・卵巣は温存するので月経はなくならず、出産もできます。しかし、何年かたって再発する可能性があります。根治療法では、子宮内膜症自体は根治できますが、出産はできなくなり、卵巣を嫡出すれば、更年期障害が始まる場合もあります。どちらも従来は開腹手術で行われていましたが、最近では腹腔鏡下で患者さんのからだに負担のかからない手術が次第に広まってきています。どのような治療法を選択するかは、将来を見越した長期的な計画のもとでメリット、デメリットを充分に考慮し、家族や主治医とよく話し合って決めることが大切です。婦人科の腹腔鏡下手術をリードする
「医者になって初めて開腹手術を執刀し、患者さんの術後の痛みはおなかの傷からと直感したときから、痛みを何とか和らげる方法はないものかと考えていました」とおっしゃる堤先生。東京大学医学部附属病院では、子宮内膜症や子宮筋腫など、婦人科良性疾患の90%以上を腹腔鏡下手術で治療しています。腹腔鏡下手術というのは、おなかに3mm〜1cmの穴を数カ所開け、その穴から腹腔鏡というスコープを入れて内部をモニターに映し、電気メスなどで手術を行います。出血が少なく、精密な操作ができる確実な手術方法※です。
また、開腹手術に較べて患者のからだへの負担が軽いのが特徴。術後の痛みが少なく、食事も翌日からとることが可能です。入院期間は普通3日間程度で、退院後1〜2週間には職場復帰も可能。傷跡も小さくてすみます。さらにモニターに映った手術の画像を録画し、退院前にビデオを見ながら手術の内容を説明してもらえるので、手術を自分の目で碓認し、よく理解することができます。
3Dメガネをかけ、モニターの2次元の画像を立体的な3次元画像にして、腹腔鏡下手術を行う場合もあります。
電子メスで、腹膜のミクロ的な病変を処置しています。眼で見逃すような病変も治療できます。
子宮内膜症と不妊症の関係は?
私は5年前に結婚してまだ子どもができません。婦人科で子宮内膜症と診断されたのですが、子宮内膜症のせいで不妊症になっているのでしょうか。
不妊の原因でも結果でもありえます。
子宮内膜症と不妊との関係は、とても難しい問題です。子宮内膜症の患者さんの30〜50%に不妊の症状があり、不妊症の人の2人に1人は子宮内膜症です。厚生労働省の調査※では、出産回数が増えると子宮内腹症の発症が遅れることがわかっています。
これは、妊娠・授乳期間に月経がないためで、不妊が子宮内膜症の原因になっていると考えれますが、逆に子宮内膜症が原因になって、不妊症になっているケースも多くあります。その場合は、保存療法の手術で病巣を切除し、癒着などを剥離すると、妊娠しやすくなります。
『ホスピタウン』2002年9月号より