安心

重度の子宮内膜症と12年つきあい
「妊娠は無理」と告げられた私が出産できた

シンガー・ソングライター 平松 愛理

痛みで体の力がもぎ取られるよう

声すら出せないほどの激痛が私を襲ったのは、忘れもしない1989年の3月6日。その日は、NHKで歌番組のオーディションが行われる日でした。
前日から月経で腹部に痛みがありましたが、それが夜中になるとひどくなり、鎮痛剤を何錠飲んでも痛みは軽くなるどころか増すばかりです。翌朝は、痛みで立てない、声も出ないほどでしたが、なんとか会場へ向かいました。
オーディションは、鎮痛剤を何錠も飲み、激痛に耐えながらなんとかこなしました。しかし、帰途につき、タクシーから降りてドアがバタンと閉まった瞬間、路上に倒れてしまったのです。みずおちを思いっきりなぐられたような痛みが絶えず続き、息を吸うことも吐くこともできない状態でした。
その夜、近くの病院へ運ばれ、盲腸 (虫垂炎)と診断されて即手術が行われました。執刀医から「月経血が逆流しているため、右の卵巣が破裂し、多量の出血もしている」と告げられました。
盲腸の手術後、5日間で退院できましたが、痛みがなくなるどころか、激痛が毎日続くようになりました。あまりの痛みに、いつも体が前かがみになっているほどでした。
退院後は、夜寝る前に必ず枕元にサンドイッチと飲み物、鎮痛剤を用意しておきました。というのも、目覚めたらまず胃を荒らさないように用意した物を食べ、薬を飲まないと、痛みで体が動かせなかったからです。
さらに、その年の7月の月経のときに、出血が止まらなくなったのです。怖くなり、大学病院で内科医をしている兄に相談したところ、自分の病院で検査をしてみないかとすすめられました。
病院で血液検査や超音波などを受けたあと、子宮内膜症の疑いが強いので、検査をかねた腹腔鏡手術を試みることになりました。腹腔銃手術とは、おなかに3カ所の小さな穴を開けてカメラを差し込み、内部をモニターに映し出すもので、これにより本当に子宮内膜症かどうか確定できるそうです。
モニターでおなかの内部を確認してもらうと、通常は親指の先ほどの大きさの左右の卵巣は、両方とももセンチほどに肥大し、右の卵管は詰まっている状態で、卵巣にはチョコレートのう腫と呼ばれる血液のかたまりもあったそうです。
これにより、重度の子宮内膜症と診断されました。自分が子宮内膜症であったことにも驚きましたが、なにより私がつらかたのは、「妊娠は無理」と告げられたことです。ショックで声が出ないまま、私のほおにはハラハラと涙が流れ、母も横で号泣しました。
ところが、泣きながら病室に帰った私を待っていたのは、常に死と隣り合わせで難病と闘っている同室の人たちからの、叱咤激励の言葉でした。難病の同世代の女性からは、「平松さんは結婚できるやんか。私なんかこんな体やったら結婚もできへんわ。好きな仕事もできるやろ!」といわれ、思わず「ごめんなさい。すいません!」と謝っていました。
そのとき、「よし、この病気と闘うぞ。子供が産めないなら、シンガー・ソングライターとして、どんどん作品を生もう!」という気持ちが湧いてきたのです。そして書いたのが、2枚めのシングル『太陽のストライキ』という曲でした。これは、私を励ましてくれた同室の人たちに捧げた作品です。
退院してからは、鼻から噴霧するホルモン薬を半年間試すことになりました。この療法は、偽閉経療法といって、治療中は月経が来ないので、子宮内膜症の痛みからは解放されました。しかし、今度は筆舌に尽くしがたい副作用に悩まされることになったのです。
常に、頭痛、めまい、腰痛がつきまとい、加えて、急激なほてり、のぽせ、発汗が突然起こります。真冬で雪が降っているにもかかわらず、裸で歩けると思うほど体がほてる。寒い部屋で取材を受けていても、鼻先からポタポタと汗が落ちるほどの急激な発汗。突然倒れるほどひどいめまいもありました。仕事中は周囲に不審がられないように常に気をつかい、これもたいへんなストレスとなりました。
つらい治療に耐えた結果、半年後の検査で、卵巣が正常の大きさに戻り、右の卵管の詰まりも改善されていることがわかりました。
ところが、1991年ごろから、子宮内膜症の痛みの傾向が変わってきたのです。以前の痛みのピークは月経の2日めで、その日をやり過ごせばなんとか持ちこたえられていました。ところが、月経以外の日にも、突然、体の力をすべてもぎ取られるような痛みが襲い、バタッと倒れるようになったのです。
1カ月に一度は必ず倒れ、救急車で病院にかつぎ込まれるということが20回以上も続きました。病院では必ず、「右の卵巣が腫れているので、卵巣摘出手術をします」といわれました。しかし、その都度、手術を拒み、痛み止めの注射を打っては仕事に向かう日々でした。
また、少しでも痛みが軽くできたらと、針灸治療を受けたり、気功を習ったり、ついには霊能者によるお祓いまで試みたりしましたが、期待したような効果は得られませんでした。
そこで、91年の秋には再び、2回めの偽閉経療法を行いました。案じていた副作用は1回めほどひどくなかった代わりに、今度は効きめもいまひとつでした。そして半年間の治療が終わると、子宮内膜症の痛みがまた起こりました。

好きな仕事を続けたことで乗り切れた

しかし、この痛みに苦しみながら仕事を続けるなか、幸福が訪れました。人生のパートナーにめぐり会い、結婚することになったのです。音楽プロデューサーである彼は、公私ともに私を支え、子宮内膜症という病気を含めて受け入れてくれました。1994年のことです。
結婚から一年後、ある医師のもとで検査・治療を受けることにしました。その医師にも、妊娠はむずかしいと告げられていたのですが、3回めの検査のあと、なんと妊娠したのです。
26歳で子供は無理という診断をくだされてから、いままでに何度、腫れた卵巣を摘出する手術をすすめられたかわかりません。しかし、「もしかしたら」という、わずかな望みを自分でもぎ取りたくないという一心でがんばってきて、本当によかったと思いました。
しかし、喜んでばかりもいられませんでした。妊娠中は赤ちゃんが育ってくると子宮も大きくなります。すると、臓器どうしの癒着部分が引っぱりあってひどい痛みに悩まされました。それでも、96年に無事に帝王切開で女児を出産することができ、開腹時には、癒着もはがしてもらいました。
ところが、娘を産んでから2カ月で月経が戻り、子宮内膜症の痛みも再発したのです。出産後は若干痛みがやわらいだ気もしますが、以来今日まで、子宮内膜症とつきあう毎日です。こうして振り返ると、子宮内膜症を発症して以来12年もの間、毎日が激痛と闘う日々です。
その間、自分が子宮内膜症である事実を伏せてきました。発症した当時はいまに比べ、婦人病に対する世間の理解度が低く、誤解がまん延していたからです。元気な姿で夢を与えるのがプロフェッショナルなあり方だと思っていたので、どんなにつらくてもかくし通してきました。しかし、同じ病に苦しむ女性がふえるなか、私の経験が役に立つかもしれないと思い、今年3月のテレビで、公表することにしたのです。
痛みは、経験すればするほど、客観的にコントロールできるようになると思います。たとえば私の場合、痛みに耐えるときは耳を澄まし、この世でいちばん高い音を見つけようとするのです。すると、不思議に痛みがやわらぎます。やはり、私と音は切っても切れない関係のようです。
そして私にとって、痛みと共存しながら生きて行くうえでいちばん大切なことは、好きな仕事を続けることでした。
同じ病気に苦しんでいる人にいいたいのは、痛みに負けないで、仕事でも趣味でもなんでもいい、自分が一生懸命になれることを持ち続けてほしいということです。私も、そうすることで、12年間も重度の子宮内膜症とつきあってこられたのですから。

ひとことアドバイス

子宮内膜症の患者さんのなかには、不妊を訴える人が30%程度と多く、逆に不妊症の人を調べると、半数近くに子宮内膜症があるのは事実です。したがって、子宮内膜症が不妊と関係の深いことは間違いありません。
ただし、子宮内膜症のある人がみな、不妊になるわけではありません。妊娠して産婦人科を受診して、初めて子宮内膜症が見つかることもあります。
平松さんのように、痛みの症状が強くても自然に妊娠することもあります。一般の不妊検査を受けているうちに妊娠することも少なくありません。
また、子宮内膜症によって卵管が癒着したことなどにより、自然妊娠に期待しにくい場合は、体外受精という治療法をおすすめすることもあります。
卵巣から取り出した卵子と、精子を体外で受精させて子宮に戻すわけですが、この治療法では、子宮内膜症があっても、妊娠成績に影響はなく、成果が期待できます。

(堤 治)

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不明な点の多い子宮内膜症の原因から症状、
不妊との因果関係までを詳細に解説

堤 治

200万人もの女性が苦しんでいる

子宮内膜症に苦しむ女性が急増しています。1998年に厚生省(現・厚生労働省)が行った調査では、この病気で治療中の患者数は全国で約13万人と推定され、診断がついていない人や治療を受けていない人を加えると、その実数は、100万〜200万人にのぽるのではないかと報告されています。
子宮内膜症は、子宮内で赤ちゃんのベッドとなる子宮内膜という組織が、本来あるべきところ以外の場所(左図参照)に発生し、増殖していく病気です。子宮から離れた肺、脳、食道、あるいはヘソなどに発生する場合もあります。
子宮の中の内膜組織は、卵巣から出るエストロゲンという女性ホルモンの作用で、毎月、徐々に厚くなり、月経時には子宮の壁からはがれ落ちて、血液とともに膣から排出されます。
同様に子宮の外にできた子宮内膜も、エストロゲンの作用を受けて月経のたびに出血・剥離をくり返します。その結果、病変部が炎症を起こし、たまった血液が血のりとなって子宮や卵巣、卵管、直腸などの臓器を癒着させ、最終的に、骨盤内全体がかたまりのようになっていくのです。
また、卵巣の内部で子宮内膜組織が増殖すると、卵巣の中にチョコレートのう腫といって、古い血液がたまった袋ができ、卵巣が腫れていきます。子宮内膜症と子宮腺筋症(内膜組織が子宮筋層内で増殖する病気)が合併して生じる場合もあります。
子宮内膜症自体は命にかかわらない良性の疾患ですが、不明な点が多く、発症のメカニズムも解明されていません。月経血が卵管を逆流して腹腔内に飛び出し、増殖するという「逆流説」、逆流した月経血の刺激で腹膜が子宮内膜に変化するという「化生説」、発生の初期に子宮内膜の芽がさまよう「迷入説」などがいわれていますが、いずれも仮説の段階です。
しかし、子宮内膜症の発症リスクは、初潮からの月経の周期や期間などに関係するようです。初潮が早いほど、月経の周期が規則正しくて短いほど、子宮内膜症はできやすいのです。
逆に月経不順であったり、遅れがちだったりする人には子宮内膜症の少ないことが知られており、初潮の低年齢化、結婚・出産の高年齢化、少産化などの女性のライフスタイルの変化が、月経の回数をふやし、子宮内膜症の増加を助長している可能性が考えられます。

必ずしも不妊になるわけではない

子宮内膜症の自覚症状で、いちばん大きな訴えは、"痛み"です。月経時の下腹部痛、腰痛、頭痛に加え、月経時以外にも同様の痛みを訴える人も、かなりの割合で見られます。
こうした痛みは、患者にとって非常に耐えがたく、「おなかの底がしぼられ、引きちぎられるようだ」とか、「陣痛や帝王切開後の痛みの何10倍にも相当する」などとよく表現されます。突然、下腹部に激痛が走った場合は、卵巣内でのチョコレートのう腫の破裂が考えられ、癒着がすすむと、排便痛や性交痛を訴える人もふえてきます。
このほか嘔吐、発熱、下痢、便秘など、痛み以外の症状を訴える人も少なくありません。子宮腺筋症を合併している場合には、月経過多も起こります。
病気の進行度と痛みの度合いが必ずしも一致しないことも、子宮内膜症の複雑さを表しています。子宮内膜症は癒着の程度などの診断基準から1〜4期の4段階に分類されますが、軽症の1期でかなり強い痛みを訴える人がいれば、診断上は3〜4期と重症なのに、あまり痛まない人も見られるのです。
また、不妊症との因果関係も、むずかしい問題です。
日本子宮内膜症協会が子宮内膜症患者に行った調査では、不妊を主症状とする人、不妊症の治療中に子宮内膜症が発見された人が50%に達しています。私の経験でも、子宮内膜症の患者には不妊を抱える人が多く、逆に不妊症の患者のおなかを腹腔鏡(先端にレンズのついた内視鏡を外から挿入して腹腔内を直接見る医療用器械)で検査すると、約半数に子宮内膜症が見つかります。
こうした状況から、子宮内膜症と不妊症が深い関係にあることは明らかですが、子宮内膜症が不妊の原因なのか、不妊のために子宮内膜症になるのかは、ハッキリしません。
たとえば、厚生省で子宮内膜症患者の初潮から症状が出るまでの期間を調べたところ、出産経験のない人で平均14年、出産経験が1回の人で平均21年という結果になりました。後者には妊娠中や授乳中で月経のない期間が2年ほどありますが、7年も遅れた説明にはなりません。むしろ妊娠・出産自体に、子宮内膜症を予防する効果があるのではないかと想像できます。
そうなると、妊娠の機会のなかった人や別の原因で不妊の人は、その効果の恩恵にあずかることなく月経を重ねたために、子宮内膜症ができたことになり、不妊が子宮内膜症の原因ではないかと考えられるわけです。
しかし、実際には子宮内膜症が不妊の原因だった人が、治療によって妊娠するケースも多く、この場合は因果関係が逆になります。子宮内膜症があっても、妊娠・出産している女性もたくさんいます。
このように、子宮内膜症と不妊との関係は今後も研究が必要ですが、重要なのは、子宮内膜症の患者がすべて不妊になるわけではないということです。たしかに、子宮内膜症により卵管の障害などが起こっている場合は、不妊につながることもあります。しかし、現在、さまざまな治療が行われており、子宮内膜症の治療中に妊娠、ということも十分考えられるのです。

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適切な診断法と治療法の知識を持てば
自分に最善な子宮内膜症での選択が可能

堤 治

東京大学医学部附属病院子宮内膜症の診断法

子宮内膜症の診断は、以下の診察・検査を組み合わせて行います。

問診

自覚症状をくわしく、正確に伝えることが大事。とくに痛みの部位や程度、月経との関係、以前に比べての変化などは重要な診断材料になる。

内診

膣や直腸の中に指を入れ、子宮の位置や大きさ、傾き具合、硬さ、周囲との癒着の有無、卵巣の掛れや癒着の具合、チョコレートのう腫(卵巣内にできるチョコレートのような古い血液のかたまり)の有無などを確認する。苦痛に感じるかもしれないが、大切な診察。

画像診断

超音波(エコー)CT(放射線コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像)による卵巣内部の画像から、卵巣のう腫があった場合、チョコレートのう腫かどうか、卵巣ガンの心配はないかなどを判別する。超音波、CT、MRIはそれぞれ特徴的な像を示すので、比較的鑑別は容易。

腫瘍マーカー

ガン細胞など、体内で異常にふえた細胞から出る特殊なたんぱくで、存在の有無を採血で調べる。通常はガンの診断などに用いられる検査法だが、腫瘍マーカーのCA125は、子宮内膜症でも高値を示し、70〜80%の患者で正常範囲(35単位)以上になることが知られている。

腹腔鏡・開腹検査

直接おなかの中を見て、病巣部を確認する。従来は開腹手術によって行われていたが、現在は、腹腔鏡という先端にレンズのついた内視鏡を使った検査を用いる場合が多い。
腹腔鏡はおなかを切らないので、術後の疼痛がきわめて少なく、患者にとって肉体的負担が軽いのが特長です。後述の治療法でもふれますが、検査とあわせて治療もできるというメリットもあります。
ちなみに、実際は内診によって局所に痛みや癒着、卵巣のチョコレートのう腫などの特徴的所見が認められれば子宮内膜症と診断されるケースが多いのですが、病巣そのものはおなかの中を見ない限りは確認できず、確定診断はくだせません。
とはいえ、子宮内膜症が疑われる患者すべてに腹腔鏡や開腹検査を行うのは不可能なため、その前段階での診断は「臨床的子宮内膜症」と呼び、確定診断との区別がされています。

子宮内膜症の治療法

治療の基本は薬物療法と手術療法です。そのなかでも、いくつか選択肢があるので、患者自身が何を優先的に望んでいるか(痛みの緩和なのか、不妊の治療なのかなど)を医師にしっかり伝えることが大切です。そのうえで、年齢、現在および将来の妊娠の希望の有無、症状の程度、過去の治療の有無などを考慮しながら、治療方針が組み立てられていきます。

薬物療法

【内膜組織の増殖を抑えるホルモン療法】
ホルモン療法にはエストロゲン(女性ホルモン)の分泌を減少させて人工的に閉経後の状態をつくり、症状の軽減・病巣の縮小を図るGnRHアゴニスト療法と男性ホルモン類似のダナゾール療法の二通りの方法があります。
いずれも副作用があり、使用期間が限られる(4〜6カ月)、治療中は排卵・月経が止まって妊娠できない、治療後に再発する場合もある、などの問題もあります。治療の副作用ががまんできない人やすぐにでも妊娠したい人は、腹腔鏡手術という手段もあるので、医師と相談するとよいでしょう。
《ダナゾール療法》
薬品名はボンゾール。月経・排卵を抑制すると同時に、病変部に直接働き、病巣を萎縮させる作用もある。副作用は吐きけ、体重増加、軽度の肝機能障害など。
《GnRHアゴニスト療法》
薬品名はリユープリン、スプレキュア、ゾラデックス。副作用はイライラ、ほてりなどの更年期障害に類似した症状、骨量の減少など。これらを緩和する目的で、少量のエストロゲンの同時投与も試みている病院もあるので、確認するとよい。
以上のホルモン療法を6カ月間継続すれば、通常は病巣が小さくなって痛みも軽くなります。治療効果は、半年から1年は継続する場合が多く、不妊の人は、その間の妊娠も期待できます。
ただし、1回ホルモン療法を行ったら、最低6カ月間の休みが必要です。また、5年、10年と長期にくり返し行える治療でもありません。以下の対症療法を上手に利用しましょう。

痛みを抑える対症療法

鎮痛剤とピルがあります。鏡痛剤は、自分の体に合ったものを、痛みがひどくなる前に服用すると効果的です。
経口避妊薬のピルは、排卵を抑えると同時に子宮内膜を萎縮させることから、月経痛の緩和に役立ちます。日本でも副作用の少ない低用量ピルが、避妊の目的で認可されました。ピルは内服を中止すれば、次の周期には排卵が戻るので、妊娠を調整したい人にはおすすめです。

手術療法

【腹腔鏡手術と開腹手術】
最近は、子宮内膜症手術を腹腔鏡下で行う医療機関がふえています。全身麻酔のもと、腹腔鏡をヘソの下から差し入れて、おなかの中を観察しながら、病変部を電気メスやレーザーで焼き取る手術です。これにより癒着もはがせます。
腹腔鏡手術には、腹壁に5〜10mmの穴を3〜4カ所開けるだけなので、術後は3日前後で退院できる、早期に妊娠が期待できる、開腹ではある程度避けられない術後の癒着が少ないなどの利点があります。しかし、癒着がひどい場合など、途中で開腹手術に切り替えざるを得ない場合も考えられます。

【保存法と根治法】
保存法では病巣のみを除去して子宮や卵巣は温存し、癒着もはくり(剥離)するため、妊娠しやすくなりますが、何年かあとに再発する可能性があります。子宮や卵巣、または両者を切除する根治法では症状は確実に改善しますが、妊娠はできなくなります。
そのため、一般に、20〜30代では、当面子供はほしくない場合でも保存療法を選ぶケースが多く、一方、40代で妊娠を望まず、薬も無効な場合は根治手術を選択するケースが多いようですが、妊娠は一生の問題なので、よく考えて決定することが大切です。

『安心』2001年7月号より

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