よくある質問(妊娠と出産編)
便秘について
便秘がひどくなって辛いのですが、薬をのんでも大丈夫でしょうか。
妊娠中によくある問題です。
もともと便秘で辛い女性は少なくありませんが、妊娠すると、ホルモンにも変化がでて、余計大変になる傾向がみられます。
なぜそうなるかというと、妊娠中はプロゲステロンというホルモンが大量に分泌され、子宮の筋肉を弛緩させ、流産や早産防ぐ働きがあります。それは大切な働きですが、プロゲステロンは同時に腸管の運動も抑制して、便秘がひどくなると考えられます。
二、三日ででればいいですが、一週間もというと問題です。必要な場合は、便秘の薬をのんでもらいます。私がよく処方するのはラキソベロンRの水薬です。夜寝る前にコップ一杯のお水と一緒に2、3滴のんでもらいます。効かなければ5滴、6滴とか量を増やして様子をみます。
お薬も時に頼らざるをえませんが、生活習慣も大事です。胃や腸は食物を摂取すると刺激で動き出す性質があります。夕食から朝までの12時間ほどは休んでいた胃腸が朝ごはんを食べると刺激で動き出します。そのときの自然なお通じを忙しいからとかいって我慢して、抑えてはいけません。よいリズムに従って、快適な生活習慣をとりもどすのが大事です。
バースプランについて
バースプランという言葉を耳にしますが、どんなプランでしょうか。
出産は一生にそう何度もない大きなイベントです。世代をつなぐ生命の営みという意味では一番大切なことといってもいいでしょう。出産をどのように迎え、どうしたら自分らしくお産をできるかと考えることからバースプランは始まります。出産する施設にしても、大学病院や大病院、身近な地域の基幹病院、産科専門病院、個人開業医、開業助産院様々なタイプがあります。同じようなタイプの施設でも、それぞれ特徴をもっています。
その中から自分にあったものを選びなさいといわれても、困ってしまいますね。よいお産を選ぶにはまずお産の仕組みを知ることが大事です。陣痛は子宮の収縮で、その結果子宮口が開き、胎児は頭を先に産道を通過して生まれてくる。その過程で医学的に必要な処置にどのようなものがあるかも知っておく必要があります。会陰切開は、父親の立会いは、生まれてから母児同室か等ご自分の考えをプラントしてまとめましょう。分娩時のバックグランドミュージックも自分の好きなものを選びたいですね。
自分なりのバースプランがたったら、それにあった分娩施設を選ぶことになります。あるいは、分娩を予定した施設で医師や助産師の助言を受けて、バースプランを固めるということもありえます。前向きに自分なりの出産を計画する。お産が楽しみで待ち遠しくなりますよ。
タバコ・酒について
妊娠中はタバコやお酒は止めなければいけませんでしょうか。
タバコとお酒では多少考え方が違います。
タバコは胎児に悪影響を及ぼすことは明白ですので、妊娠中は「百害あって一利なし」と言わざるを得ません。きっぱり止めていただきたいですが、少なくともできる限り控えましょう。喫煙習慣のある方も、妊娠しようという時には一念発起して禁煙していただきたいものです。
アルコールも大量かつ習慣的になれば、胎児の発育や出生後の発育に悪影響を与えます。一口のんでホッとするくらいは問題になりません。一口で止まらなくなるのが心配な方は、飲まないのにこしたことはありません。
蛇足ですが、アルコールの子宮筋に与える影響は、収縮の抑制です。つまり子宮が収縮して切迫早産になっている時には、むしろ早産を抑えるよい効果があると考えられていたこともあります。今はもっと有効な子宮収縮抑制剤(ウテメリンR)があり、アルコールを勧めることはありません。
妊娠中の運動
妊娠中の運動はどの程度していいのでしょうか。散歩を30分しなさいといわれたのですが、つい45分してしまいました。大丈夫でしょうか。
妊娠中もお腹が張ったり、切迫早産の兆候がなければ、積極的に運動をされるのはよいことです。散歩は5分10分というより、30分はされたほうが運動としての意味があるということで、それが45分でも問題ありません。妊婦水泳、マタニティーヨガ等妊婦さん向けの運動も余裕があればトライしたらいいでしょう。骨盤の関節や筋肉を鍛える運動は、安産のもとになります。特に体の硬い人は、頑張りましょう。努力は報われます。
妊娠中の旅行
友人の結婚式がヨーロッパであり、参加したいのですが、妊娠中に飛行機に乗るのは危険で断念しなくてはいけませんか。
妊娠の時期にもよりますが、あまり遠方への旅行は勧められません。特に妊娠初期で流産のリスクが高い時や妊娠末期でいつ分娩が始まるかわからない時は飛行機に乗って外国までいくのは危険が大きく、自重したほうがいいです。飛行機会社にもよりますが、妊娠30週前後以降は飛行機に乗るのに医師の診断書が要ります。
妊娠中のレントゲン
今妊娠30週です。先日、足を挫いて、レントゲンをとってしまったのですが、大丈夫でしょうか。腹部は遮蔽してもらいました。
娠中のレントゲン撮影は避けられるものはできるだけ避けたいものです。妊娠の早い時期、特に胎児の臓器が形作られていく8から12週前後の大量被爆は心配です。逆に、30週と胎児も大きくなり、必要があって足の骨のレントゲンを1、2枚とる分にはあまり神経質になることはないでしょう。腹部の遮蔽をしてもらったのも大変結構です。
それはそうと、お腹が大きくなると体のバランスがとり難くなり、ふだんよりよろけたり、転んだりしやすくなります。靴のかかとは低いものにしてください。
前置胎盤
妊娠15週です。先日超音波検査で胎盤の位置が低いので、前置胎盤の可能性があるといわれました。大丈夫でしょうか。
胎盤の位置は大事な問題です。子宮口を完全に塞ぐような場合、全前置胎盤といいます。胎盤の端が子宮口にかかるような場合を部分前置胎盤といいます。
前置胎盤の場合、子宮口が開くと、胎盤が裂けて大出血を起こします。通常陣痛が始まる前に、帝王切開で分娩します。
ただし、15週の段階では、子宮もまだ小さく、胎盤と子宮口の位置関係は判断できません。経過をみているうちに、胎盤の位置と子宮口の間に距離が生じてくれば問題ありません。万一本当に前置胎盤ですと、妊娠30週前後から出血を防ぐ意味もあって安静入院などの対応が必要になります。その場合、母子の安全のために、きちんと頑張ってもらわなくてはいけません。
マタニティーブルーについて
お産のあとにマタニティーブルーになるということを聞いたのですが、心配しなくて大丈夫ですか。
出産すれば、いうまでもなく、いままでいなかった赤ちゃんがいて、その存在をお母さんが支えることになります。大きな環境の変化です。また10ヶ月かかって大きな役割を果たしていた胎盤が瞬時にして体内からなくなり、ホルモンの変化も急激です。
出産はめでたいことといっても、肉体的にも社会的にも大きな変化に対応していくのはなみたいていではありません。そのような時に気持ちが沈んだり、欝気分になったり、子育てなどに対して、あるいはそれとははっきりしないまでも漠然とした不安感にとらわれることは、まれではありません。普通におこりうることと言ってもいいでしょう。
いま述べてきたマタニティーブルーはだれにでも起こりうることです。乗り越えるためには、周囲の理解も必要ですし、産婦人科医や助産師に相談することもお勧めします。