院長ブログ

医療ルネサンス

[医療・医学など]

「医療ルネサンス」は1992年から読売新聞が患者さんに役立つ医療最新情報を分かりやすく提供しているもので、私も愛読しております。10年以上前ですが、子宮内膜症の腹腔鏡下手術も取り上げて頂いたことがあり、東大ばかりか日本の腹腔鏡下手術の普及・拡大のきっかけの一つになったと記憶しています。

今回、不妊治療をとりあげられ、生殖医療に携わる者として、特に注目して拝見しました。不妊治療の現場に密着、掘り下げた良い企画だと思いましたが、少し気になる事がありましたので、ここで皆様にも考えて頂きたいと思います。

不妊症の原因は、大きくわけて排卵因子・卵管因子・男性因子の三つであることはご存知でしょう。その原因を究明して治療をおこない、できるかぎり自然な形で妊娠が成立することが望ましいのは言うまでもないでしょう。

上に述べた三因子の検査を進めて、卵管に問題があるとされた場合や子宮内膜症が疑われた場合、あるいは原因がはっきりしない場合には腹腔鏡による検査・手術を適用するのは教科書的というか王道であると思います。

今回の「医療ルネサンス」では、限られた紙面のためでもあるでしょうが、これらの医学的なステップへの言及があまりされず、体外受精や顕微授精さらに新しいテクノロジーが紹介され、不妊=体外受精という誤解を生ずることが危惧されます。

今日の記事でも子宮内膜症の患者さんが体外受精で治療されていまいたが、その前に腹腔鏡下手術を受けられたのか気になるところでした。

もちろん、ケースによっては、これらのステップをとばして、一気に体外受精や顕微授精に進む選択肢もあってよいと思われますが、その場合も十分なインフォームドコンセントが必要でしょう。日本産科婦人科内視鏡学会理事長として不妊症の診療ガイドラインを作っている立場もあり、不妊症の特集最終日にあたり、ひとこと発言させて頂きました。

2008年05月09日 23:34 [医療・医学など]

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